北から南まで刑務所を渡り歩く仕事をしていた時に、はじめて訪れる場所がほとんどだったから、余計に時間をとって撮影しながら歩き回っていた。その前には、指先の没頭から逃れる、解放されることを期待して、中型の重い機器を担いで、田畑や街の裏側をのっそり歩いていた。旅に出てカメラを覗いて歩き回ることが身に染み付いた行為であるので、こちらはその癖を繰り返すばかりだが、同行者はその歩みに終着点やらの目的が明快に無いと辛いものらしい。立ち止まってシャッターを押すと、なんでこんな場所を撮影するのか、怪訝な顔つきをされるけれども、説明するほどのこともない。ただこの癖は、現実の再現認識という現像であるから、場所の出会いを反復することとなり、見逃してよいものを見逃さず、余計な現実を現実として捉えるようになり、そもそもの出会いの新鮮を打ち消す効果もあるから厄介ではある。
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