諦めの縁で

距離を拡張しようと考えた翌日の早朝に走ると、はじめてこれまでの五分の一の距離で心が割れて家に戻り歩いていた。
その項垂れた徒歩の脱力の中でなんでこんなことになったかなどという理由を考える気持も浮かばなかったが、ふと横を眺めその光景をひとつも描写していないといきなり痛切に感じるのだった。

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枝騒ぐ背上ノ空

ーマツ科樹木は他の植物の生長を阻害する物質を産生している。カラマツの葉にもそれら生長阻害物質が含まれていることが分かっており、その葉を秋期に散らすことで競争相手となる周辺植物の 生長を阻害していると考えられている。カラマツの落葉を人為的に耕地土壌に混和することで、雑草の発生や生長を抑制することができる。ー
帯広畜産大学地域連携推進センター、秋本正博氏のカラマツの落葉を利用した有機的雑草防除法を辿り、路肩の落葉が部分的に採集された痕跡の理由にひとつうなづいた。

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雨の残り香

この辺りを行き来する程度の数の車の轍で路肩に寄せられた唐松の落葉はこんもりふっくらと盛り上がり足首に優しい。蹴散らす気分にはなれない。真直ぐに突き抜ける通りの辻を曲がる度にコの字の路が左右に広がるこの保養林の中はアスファルトも全て隠す絨毯となって昨夜まで降った雨でも流されずに、しっとりと存在の理由を内に籠らせて香りを放ち膝から腰、腹の内側から胸へと昇りあがる、例えようの無い体感となって吸い込まれる。

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落葉拾い

早朝走りながら、おそらくまだ暗いうちに吹き下ろした風の地を這うように通り抜けた形が地面に波形に残っている落葉の加減と場所を記憶した。

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蛇行

只管に単独行を突き進むことから逃れようとする理由は、その真直ぐな道が自意識となって凍りつくのではないかという怖れがあるからだという自覚というより生きた時空から育まれたものがまずある。とはいってみても土台、個体にすぎない独りなのだから、生きる以上、生来の方向性のようなことから逃れようはないけれども、俯瞰の視点を上空へ上昇させれば、累々とヒトと時間の群が見えてくるわけで、この霧のような逸脱ともいえる垂直上昇が蛇行という冷ややかな内外の印象になっているような気がする。上昇したままだと相対的なバーチュアルが躯に染み渡ってしまうようだが。

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