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沢からの

風がない朝は樹幹の上を移動する囀の交わりの南の下方から沢伝いを大気の気温の変化が連れて来るのか距離の遠さを持ったまま緩慢な靄のような淡さで下の村か街の動き始めた唸りの塊が聴こえるときがある。時間の変化で大気の動きの流れが変わり一旦静まって北に間近な山稜から別の気配が風の中上から流れ込むように広がって漂うものを払って別の空間を仕立てる。

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真綿の

南北の窓を開けて寒かったがアラジンを足下に寄せ部屋の淀みを払うと鳥獣の物音が聴こえる。ストーブの上にのせたケトルの小さく沸騰する音が邪魔なのでシンクへ持っていき朝の弱いがざわめく息災の音響と冷気に身をひらく。

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枝の自明

葬儀に駆けつけた札幌の叔父から日々10キロを2時間かけ歩みも入れて走っていると聞き、齢70を超えた超人のような大人の躯よりも、その鍛えの持続を決定する精神の強靭を思った。
吹雪でも走ることで飯の量も押さえられ酒はワインだけだという。躯が走ることを日常の食事のようなリズムで要求する。

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枝の白冬

袖をめくり青い静脈が葉緑素と念われた積雪の路で細い枝をその上に重ねた。
26.5センチの長靴は寒冷地の仕様だったが幾度も雪かきをしていたので素足には冷たく濡れていた。

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諦めの縁で

距離を拡張しようと考えた翌日の早朝に走ると、はじめてこれまでの五分の一の距離で心が割れて家に戻り歩いていた。
その項垂れた徒歩の脱力の中でなんでこんなことになったかなどという理由を考える気持も浮かばなかったが、ふと横を眺めその光景をひとつも描写していないといきなり痛切に感じるのだった。

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