風がない朝は樹幹の上を移動する囀の交わりの南の下方から沢伝いを大気の気温の変化が連れて来るのか距離の遠さを持ったまま緩慢な靄のような淡さで下の村か街の動き始めた唸りの塊が聴こえるときがある。時間の変化で大気の動きの流れが変わり一旦静まって北に間近な山稜から別の気配が風の中上から流れ込むように広がって漂うものを払って別の空間を仕立てる。
場所によっては、目に見える数十メートル先の路肩でも此処とは違う音像を形成するのは、気象地勢と樹々の配置の他になにか別の要素があるように思えてならない。
囀が小さな肺の呼気とは思えない明晰な輪郭で林の中空に刺のように散らばって落ちる向こうのやや上空からジェットの音が聴こえると鳥たちは途端に黙りまた暫くするとおそるおそる刺を投げ、ある時に一斉に再び交わりがかき消える。
南北の窓を開け放ち目の前を粒子が流れゆくような気分でストーブを消して昼過ぎの数時間を過ごせる季節の展開となったと夕方2wdで走り回り明日は洗車しようと思った翌日には小粒の雪となり音も再び消えた。慌てる気持ちは太陽の角度が抑え込んだようでいかにも変節の潰れ方をするささやかな積雪を踏んでパーカーを頭に被って歩けば無音と思われた曲がり角の下から水の流れる音がひとつ透き通って聴こえる。