袖をめくり青い静脈が葉緑素と念われた積雪の路で細い枝をその上に重ねた。
26.5センチの長靴は寒冷地の仕様だったが幾度も雪かきをしていたので素足には冷たく濡れていた。
枝を握ったまま歩きはじめ時おり樹々に残ったものが白い粉末となって落ちる音を振り返って追い、進んで立ち止まる。
大気圏のような澄み切っている樹間から随分遠くをみつめることができるので、みることをレンズとシャッターの仕組みのように絞りの頭に変えてみようとするのだが、ーあぁ単によくみえるーという吸着から離れることができない。
足元の音をすくって記録して、一瞬の眺めを凍結して持ち帰り、さっきへというタイムトラベルをはじめると、その捜査の姿勢は時間と場所を突き抜けてありもしない静的な何かこの世でないような傾いて凍った類現実への熱中のかたちとなり、片隅のぼやけた樹木の埋まり込んだ積雪から、黒く筋汚れた白い片足を更に探す只管が生じる。この瞬間わたしは犯罪者であるのかもしれない。彼の鼓動を物真似しているなとも感じる。音はと聞けば然程遠くないゲレンデの浅ましいリズムが光景の凍結の度合いを高める濁点のように弱く風の強弱で重なる。
背をのばしてシンクに向かい湯を沸かし餅の残りで雑煮でもつくろう。