数年ぶりの寒波襲来。低温。大雪と報じられて市内は白く覆われ、早朝から雪かきをする人が汗を流している。短い日中の陽差しで溶けて滑った塊が屋根からどたっと落ちる。記憶の中では、本来この土地はこうだった。元に戻ったような気がしている。河原も道にもスキーの跡が残り、凍り付いて白く光る路面を竹スキーで登校していた。現在は車様という人間の移動が主となった都市構造に成り果てたので、こうして雪が積もれば人の歩む道がない。もっと積もって車自体の使用が不可能となり、でこぼこの道を足で踏み固めつつ歩む人の姿を浮かべた。
子供の遊ぶ姿の一切無い、この地方都市のかつて新開地だった住宅地の、どうしようもない公園などにも、命をふるって雪と戯れた痕跡がみあたらない。家々にも老いた夫婦が、遠くへ行った子供たち、孫たちの声や顔をインターネットのモニターの上をなぞりつつ、炬燵で蜜柑をむいているような静けさが広がっている。
10年の経過を考えると、このまま全体が古びていくような気配があり、人の住まわなくなった家々も増え、トルクの無い音のしない電気自動車が雪の中スタックし傾いて、あちこちに放置されている光景が浮かぶ。いっそもっと降れという気持ちがさらに強くなって雪の道を歩くのだった。