線視痕

 思いつきを残すのは冷蔵庫に貼る買物リストと同様の簡易さと気楽さでメモを添えたスケッチとなる場合もあり、スケッチの描写には長年の描写癖のような近代的な素描感が滲んでなかなか簡単に拭えない。線の束にしろ点にしろアクセントのような調子のような言うならば絵画的なイメージ化をたっぷり引き連れてしまう。
 ふと、どうでもいいことのように思えるようになり、「夢想の実現」という関わりを一枚に許してもいいだろうと鉛筆を走らせると霞んでいたことが明瞭になる。人間が二本足で歩くことを嫌悪していたような、逆さまな不自然に囚われていたのだろう。リアルな実現の為という口実は、実現という理念化そのものへの検証にもなり、実際に実現しなくても構わない現時点での思想を顕すことになる。とここまで短絡して、それにしても苟且の形式が必要になり、それは理念へ投げて戻す仕方となる。

 というのも、現実実現の検証において、演繹を拒否した事前検証の不足が矢張り多々あって、後戻りできない上、他にも様々な理由が生じてきたからでもある。