陽妄のみちとにわ

朝方自らの仰向けの裸の胸から頬まで夥しい量の白い精を吹き出して果てる浅ましい夢をみて起き上がり現実であったらよかったなどと感じたものだ。

すっかり陽射しの柔らかい樹々も解れたような枝振りのみちを、夢を引き寄せて陰嚢が冷えれば精が生まれるわなとキンタマを冷やしたこともあった実感の日々を遠く憶いだしこんな季節はむしろ股の膨れを恥と知れなどという顔つきで善人ぶったのではないかとあれこれ些細な表情が浮かぶ。どうでもよいことだ。

樹々の小路で女を抱こうと考える男の行方はひとつきりの彼方が示されているか。つづけて性もないことを遊ばせつつ歩いてから戻った大雪で根元から折れてしまった庭の小さな樹に近づいて手を触れそうになり、どうにかできると思っていたのかいと触れずに離れた。

街に降りれば既に季節の盛りに慣れたような歩みの人ばかりだが、こちらはこの街に住まう軀ではなくなっている。高地では朝は気にならないが夕刻の風はまだ一気に冷えるので気を許せない。防腐剤が剥がれ敷いた木材も反り返って修復を待つ風情のテラスに立ち、まだ早い来月の連休明けから手をつけることに座り込んでから決めていた。

再び庭を眺めここふたつみっつの季節はあまり手を加えずに眺めるだけにしたいものだと付け加えた。